血管外科一般
血管外科一般
下肢静脈瘤や透析シャント手術の他、血管外科一般の診療を行います。また、病院で、侵襲的な治療を受けられた後のフォローアップや継続処方、血管疾患に対するセカンドオピニオンなども行います。
全身に血液を送る血管が動脈ですが、年齢とともに動脈壁が硬くなり、内腔が狭くなってくると、血行障害を引き起こし、心臓、脳、下肢などに虚血性の症状を引き起こします。高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、喫煙などがリスクに挙げられています。当院では、頸動脈や下肢の超音波検査、血圧脈波検査装置等で、動脈硬化のスクリーニングやフォローアップを行います。
動脈硬化により動脈が狭窄や閉塞する病気が閉塞性動脈硬化症です。この病気により下肢への血流が少なくなると、一定の距離を歩いたときに脚の筋肉が痛くなる症状(間欠性跛行)がみられます。
さらに進行すると、安静時痛といって、安静にしているときや就寝時にも痛みが出現し、足の皮膚に潰瘍や壊疽がみられ(重症下肢虚血)、それらを放置しておくと、下肢を切断することが必要になってきてしまいます。
このような症状は、適切な治療を受け、脚への血流を改善することによって、歩行距離を伸ばす、潰瘍を治癒させる、大切断を回避する、切断範囲を小さくするなど、症状を改善することができます。特に潰瘍や壊疽を伴う重症下肢虚血の場合は、下肢が切断の危機に瀕しており、救肢のためには、迅速な血行再建が必要です。
閉塞性動脈硬化症の治療としては、保存的な治療法と手術による治療があります。
間欠性跛行の段階では、まず、薬物療法と運動療法を中心とした保存的な治療を行うことが推奨されます。薬物治療としては、主に抗血小板剤といういわゆる血液をさらさらにする薬が使用されます。また、運動療法として、毎日30分程度やや早めに歩行する練習をすることも、痛くなるまでの距離を伸ばす効果があります。さらに、日常生活上では、喫煙されている方は禁煙することは、すべての治療をすすめる上で最も大事になります。血圧やコレステロール値、糖尿病を患っている方は、血糖値などの内科的な病気をコントロールしておくことも大事です。重症下肢虚血の状態では、感染すると一気に状態が悪くなるため、感染を予防することも重要です。下肢に傷を追わないように注意すること、深爪をしないこと、潰瘍などの病変部位を清潔に保つこと、皮膚の保湿を保つことなど、フットケアを継続することがすすめられます。
閉塞性動脈硬化症の血行再建法としては、バルーンやステントといったカテーテルによる血管内治療や、バイパスや内膜摘除術など手術治療、それらを組み合わせたハイブリッドの治療が行われます。また、重症下肢虚血の患者さんでは、血行再建後の創傷の管理も重要であり、継続して行うことが必要です。
血管外科は、閉塞性動脈硬化症の専門家として治療を提供してきました。たまたま血管が閉塞していることが発見されても、無症状や症状が軽度の場合もあり、やみくもにステントなどで治療することは、かえって症状を悪化させたり、将来の治療選択肢を狭めたりすることもあり、治療適応を慎重に判断することが重要です。当院では、症状と血流の状態を評価し、適切な方針を提案いたします。血行再建が必要な場合は、適切な医療機関へご紹介いたします。保存療法の段階、また、基幹病院での治療後の創部や血行状態のフォローアップ、内服薬の処方等は、当院で行うことが可能です。
動脈硬化は通常全身の動脈に進行してきますが、頸動脈という頭へ血液を送る通路となっている首の血管が狭くなってきてしまうのが、頸動脈狭窄症です。頸動脈狭窄症は、痛みなどの自覚症状はありませんが、脳梗塞の原因の一つとなる重要な病気であります。頸動脈狭窄症は、通常、粥状硬化といって、コレステロールや脂質あるいは血液の成分などのかたまりでできているドロドロの物質の表面に薄い線維の皮膜で覆われている粥腫(プラーク)という病変でできています。それらが破綻すると、それらの一部が脳へ飛び(塞栓)、脳の血管を閉塞して脳梗塞を引き起こします。狭窄の程度が一定の割合を超えると、脳梗塞の発症率が上がるため、治療の適応となります。治療の目的としては、プラークを取り除いて、こうした脳梗塞の発症を防ぐことにあります。
頸動脈は体表面から近く、エコーで描出しやすいこともあり、動脈硬化のスクリーニング検査の一つとして、広く行われています。当院でも頸動脈エコーにて動脈硬化のスクリーニングや頸動脈狭窄のフォローアップを行います。
心臓から送り出された血液は大動脈という太い血管を通って、全身に送り出されます。その大動脈の壁が膨らんできてしまう病気を大動脈瘤と呼びます。その中でも腹部を通る大動脈(腹部大動脈)が瘤状に膨らんだものが腹部大動脈瘤で、動脈瘤の中で最も頻度の多いものです。
破裂した場合の救命率は低く、無症状の状態での治療が重要になります。一般的には破裂するまでは無症状なので、本人もわからない場合が多いのですが、近年の画像診断の進歩により、他の疾患の精査でたまたま見つかったり、健康診断で発見されたりすることが多くなっています。性別では男性に多く、また喫煙者で多いことがわかっています。
破裂のリスクは動脈瘤の径が大きくなるほど、拡大速度が速い程、高くなります。また瘤の形状が突出した形(嚢状瘤)ほど、性別では女性の方が高くなります。手術の適応は、瘤径と拡大速度で規定されており、一般的には瘤径5cm、また拡大速度で、半年で5mm以上拡大してくるものが、手術適応となります。まだ径の小さい段階では、半年や1年毎にCTやエコーで大きさの変化を経過観察しますが、嚢状瘤など大きさにかかわらず手術がすすめられる場合もあります。
腹部大動脈瘤の治療も、近年、ステントグラフトという血管内治療が広く行われるようになりました。鼠径部の小さな傷で治療することができ、体への負担が少ない治療です。ステントグラフトは優れた治療ですが、手術後の経過観察中に、再び、瘤への漏れが出て、瘤が再拡大することがあり、CTやエコーによる定期的なフォローアップが重要です。当院では、他院の画像診断の施設と連携し、ステントグラフトの術後フォローアップを行います。また、治療適応に満たないサイズの動脈瘤の定期的なフォローアップも行います。
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