下肢静脈瘤
下肢静脈瘤
下肢静脈瘤は、外科医の初期の修練過程で覚えるべき手技の一つと位置づけられていますが、診療にかかわる医師は、静脈の解剖、機能、病因、病態を理解し、治療適応、治療法の選択、合併症から創傷の管理まで含め、深く精通している必要があります。
負担の少ないカテーテル治療が全盛となった現代でもかわりなく、カテーテル治療のテクニックがあるだけで治療ができる病気ではありません。
血管外科医は長年、下肢静脈瘤を専門として行ってきた疾患であり、カテーテル治療が保険適用となる前から、ストリッピング手術(静脈抜去術)、高位結紮術、Linton手術などを行ってきており、学会でも専門的な議論を重ねてきました。下肢静脈瘤の専門家として、適切な診療を提供いたします。
下肢静脈瘤とは足の血管の病気で、「足の血管がコブになる病気」です。かなり多くの方が患っている病気ですが、生命にかかわることが少なく、放置されていることが多い病気です。
無症状の場合もありますが、症状としては、脚がだるい、夕方むくんでくる、皮膚がかゆい、夜に脚がつる(こむら返り)などの慢性的な症状が起き、生活の質(QOL)を低下させます。
女性に多く見られる病気ですが、男性にもみられます。
血管には動脈と静脈の2種類があり、下肢静脈瘤は静脈の病気です。
足の静脈の役割は、心臓から足に血液が送られ、足の組織で使い終わった汚れた血液を心臓に戻すことです。
重力に逆らって足から心臓に血液を送らないといけないため、静脈の中には“ハ”の字型の弁があり、立っている時に血液が逆流するのを防いでいます。
下肢静脈瘤は、この静脈の弁が壊れること(弁不全)によっておこる病気です。弁が壊れる要因としては、遺伝的要因や妊娠・出産、肥満、長時間の立ち仕事などが挙げられます。
弁が壊れてきちんと閉まらないために、静脈内の血液の流れが停滞し、圧が高くなって、静脈がこぶ(瘤)のようにふくれてしまいます。また、汚れた血液が心臓に返らずに、足にたまるため(静脈うっ滞)、むくみ、だるさ、足のつり(こむら返り)などの症状が起こります。通常、静脈瘤は痛みを伴うことはまれですが、たまに、静脈瘤内に血栓を作って、局所が赤く腫れて、痛みを伴う場合もあります(血栓性静脈炎)。
うっ滞症状が慢性的に強くなると、皮膚が黒ずむ(色素沈着)、皮膚潰瘍ができて治らないなどの症状があります。この段階になると、通常の軟膏処置だけでは治癒は見込めず、ストッキングや弾性包帯による圧迫処置と静脈瘤の処置が必要になります。よって、このような病変をみた場合、まず静脈弁不全の診断をつけることが先決で、適切な治療を受け、その後の創の管理を行うことが重要になります。
このような方は、できるだけ早くご相談ください。
静脈瘤の原因となる弁不全が起こる表在血管は、主に2つあり、ふとももとふくらはぎの内側を走行している大伏在静脈とふくらはぎの裏側を走行している小伏在静脈があります。治療は弁不全のある静脈の内側をカテーテルで焼灼したり、グルーとよばれる医療のりで閉塞させる治療が行われます。また、皮膚潰瘍のある方などは、手術だけでなく、圧迫治療や創傷管理を同時に行う必要があります。血管外科は、血管の治療だけでなく、創傷管理も専門であり、総合的に治療をすすめてまいります。
エコーで観察をしながら、小さな刺し傷から専用のカテーテルを静脈瘤に入れていき、弁不全のある静脈の内側を高周波またはレーザーにて焼灼し、閉塞させて潰すことで、逆流を止める治療です。皮膚を切開する必要がなく、局所麻酔で施行可能であり、従来のストリッピング(静脈抜去術)手術より、体への負担が少ない治療であります。
ふくらはぎの瘤が大きく目立つ場合は、スタブアバルジョン(stab avulsion)と呼ばれる方法で、瘤の範囲に、2-3mmの小さな傷を数か所つけて、そこから瘤を引き出して、切除する方法を併用する場合もあります。
血管内焼灼術のメリット
弁不全のある静脈内に医療用の瞬間接着剤を注入して、静脈内を閉塞させて、逆流を止める治療となります。レーザー治療と比べて、局所麻酔の範囲がせまく、術後の麻酔薬の染みだしが少ない、術後に弾性ストッキングを着用する必要がないなどの特徴があります。
血管内塞栓術(グルー治療)のメリット
下肢静脈瘤の根治的な治療法として古くから行われている手術です。
静脈に手術用ワイヤーを挿入し、弁不全を起こしている静脈を引き抜いてしまう方法です。
全身麻酔や下半身麻酔、局所麻酔で行います。血管内焼灼術が保険適用となる前は、標準的な治療でしたが、体への負担が大きく、現在はあまり施行されることがなくなりました。
医療用のストッキングで足を締め付けて、ふくらはぎの筋ポンプ作用を助けて血液が溜まるのを防ぐ方法です(静脈うっ滞の改善)。静脈瘤の手術を希望されない方には、着用をすすめております。また、静脈瘤の手術(血管内焼灼術)後には、一定期間着用する必要があります。
なお、静脈瘤がない方でも、立ち仕事の方など、足の静脈に負担がかかる方には、着用することで、だるさやむくみなどの症状をおさえることができます。
当院では、弾性ストッキング・圧迫療法コンダクターの認定資格を院長他、複数名のスタッフが所有しております。患者様の足のサイズを正確に計測し、患者様に合った弾性ストッキングを処方し、履き方をわかりやすく説明をします。
ご予約
原則、予約制にて診療を行っております。ご予約は、お電話かWEB予約、LINE予約にて受け付けております。
直接ご来院いただいた場合は、受付にて予約を入れるか、当日の診療状況により順番待ちを受ける場合もあります。
視診
受付時に問診票(症状、加療中のご病気、常用しているお薬、過去の治療歴、生活習慣など)を記載いただきます。
WEB、LINE予約の場合、デジスマ診察券の中で、問診内容をPCやスマートフォンからあらかじめご入力いただくとスムーズです。
診察
診察室にて診察を行います。
エコー検査
ペーパートランクスを着用いただき、診察室にて、立位にて、エコー検査を行います。弁不全の有無、範囲、原因血管の性状、走行、深部静脈血栓の有無などを評価する検査です。
体には負担はほぼなく、痛みはありません。ご高齢で立位が不安な方には、半坐位にて検査を行います。
治療の説明
エコー検査の結果、治療適応がある場合、治療法の説明を行います。治療同意書にご署名いただき、治療日程を決定します。
術前検査
血液検査や心電図検査などを行います。状態により、検査をパスする場合もあります。
治療当日
手術予約時間の約15分ぐらい前にご来院いただきます。準備室にて手術着に着替え、手術室にて治療を行います。
手術後、弾性ストッキングを着用します(血管内焼灼術の場合)。
術後
準備室にてお着替えいただき、術後の注意事項を説明いたします。必要な方には、準備室にて休んでいただけます。
処方箋をお渡しし、お会計して、ご帰宅いただきます。
再診
翌日に外来にて、診察を行います。再診は、通常、手術翌日と1ヶ月後に行います。
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