2026年1月27日

「足の血管がボコボコ浮き出てきた」「夕方になると足がだるくて仕方ない」
このような症状でお悩みではありませんか?
下肢静脈瘤は、日本人の約9人に1人が罹患しているといわれる非常に身近な血管疾患です。しかし、「見た目だけの問題」と軽視されがちで、適切な治療を受けずに放置してしまう方も少なくありません。
本コラムでは、下肢静脈瘤について患者さまからよく寄せられる疑問に、血管外科の専門的な視点から「病院に行くべきか迷っている」「治療が必要なのかわからない」という不安を抱える患者さまのために、よくある疑問を一つひとつ丁寧に解説してまいります。
下肢静脈瘤の初期症状は?
下肢静脈瘤の初期症状は、見た目の変化よりも自覚症状として現れることが少なくありません。
下肢静脈瘤の初期に見られる代表的な症状として、まず足のだるさ・重さがあります。
特に夕方から夜にかけて症状が強くなり、長時間の立ち仕事やデスクワークの後に顕著になります。
次に、足のむくみが挙げられます。靴下の跡がくっきり残る、夕方になると靴がきつく感じるといった症状として現れます。

また、足のつり(こむら返り)も特徴的で、就寝中や明け方にふくらはぎがつることが増えます。
さらに、足の熱感・ほてりとして、足だけが妙に熱く感じる、布団から足を出して寝たくなるといった症状も見られます。
見た目の変化としては、細い血管が網目状やクモの巣状に透けて見える「網目状静脈瘤」や「クモの巣状静脈瘤」から始まることが多いです。
進行すると、ふくらはぎや太ももの内側に太い血管がボコボコと浮き出る「伏在型静脈瘤」へと発展します。
下肢静脈瘤患者の約70%が「足のだるさ」を、約60%が「むくみ」を自覚しているとされています。これらの症状は他の疾患でも見られるため、下肢静脈瘤と気づかないまま過ごしている方も多いのが現状です。

「最近、足の調子がおかしい」と感じたら、まずは鏡で足全体をチェックしてみてください。血管の変化に気づいたら、早めに専門医への相談をおすすめします。
下肢静脈瘤はほっといても大丈夫ですか?
下肢静脈瘤は自然に治ることはなく、時間の経過とともに徐々に進行する疾患です。
下肢静脈瘤を放置した場合のリスクについて、進行段階ごとに説明いたします。
初期段階では、足のだるさやむくみ、軽度の血管拡張が見られますが、日常生活への支障は比較的軽微です。
しかし中期段階になると、血管の拡張が進み、見た目にも明らかなボコボコとした静脈瘤が形成されます。皮膚のかゆみや湿疹(うっ滞性皮膚炎)が出現し、色素沈着が始まることもあります。
さらに進行して後期段階に至ると、皮膚が硬くなる脂肪皮膚硬化症、さらには皮膚潰瘍へと発展するリスクが高まります。一度潰瘍ができると完治までに数ヶ月から数年を要することもあり、再発も珍しくありません。

特に注意が必要なのは、血栓性静脈炎の発症です。
静脈瘤内に血栓ができると、急激な痛みや発赤、腫れを伴います。稀ではありますが、血栓が深部静脈に及ぶと深部静脈血栓症(DVT)を引き起こし、さらに血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症という重篤な状態になる可能性もあります。
下肢静脈瘤は「見た目だけの問題」と軽視せず、症状が軽いうちに専門医を受診することが大切です。早期であれば、弾性ストッキングによる保存的治療で進行を遅らせることも可能です。「ほっといても大丈夫」ではなく、「早めの対策が将来の足を守る」と考えていただければ幸いです。
下肢静脈瘤は何科に行けばいいですか?
「足の血管の問題だから皮膚科?それとも整形外科?」と、受診先に迷われる方は非常に多いです。下肢静脈瘤の専門的な診断・治療を行うのは、主に血管外科または心臓血管外科です。
血管外科は、動脈や静脈など血管全般の疾患を専門的に扱う診療科です。
下肢静脈瘤の診断には、超音波検査(エコー)による静脈弁の逆流評価が不可欠であり、血管外科ではこの検査を日常的に行っています。
最近では、下肢静脈瘤の治療に特化した「下肢静脈瘤専門クリニック」や「静脈瘤センター」も増えています。これらの施設では、カテーテル治療(血管内焼灼術)など最新の低侵襲治療を日帰りで受けられることも多く、忙しい方にも選択しやすい環境が整ってきています。
受診の際は、以下の情報を整理しておくとスムーズです。
・症状がいつ頃から始まったか
・どのような時に症状が強くなるか
・家族に下肢静脈瘤の方がいるか
・妊娠・出産歴(女性の場合)
・現在服用中の薬
などを事前にメモしておくことをおすすめします。
まずはかかりつけ医に相談し、血管外科への紹介状を書いてもらう方法もありますが、下肢静脈瘤が疑われる場合は最初から血管外科を受診しても問題ありません。
下肢静脈瘤になったらやってはいけないことは?
下肢静脈瘤の悪化を防ぐために、避けるべき行動や習慣がいくつかあります。
まず、長時間の同じ姿勢(立ちっぱなし・座りっぱなし)は避けてください。
足の血液は筋肉のポンプ作用で心臓に戻りますが、長時間動かないとこのポンプ機能が働かず、血液がうっ滞して下肢静脈瘤が悪化します。デスクワークや長時間のフライトでは、1時間に1回は立ち上がって歩く、足首を回すなどの対策が必要です。

次に、足を締め付ける衣類の着用も問題です。
ガードルや締め付けの強い靴下(医療用弾性ストッキング以外)は、静脈の血流を妨げる可能性があります。特に太もも付け根や膝裏を強く締め付けるものは避けましょう。
また、肥満の放置も下肢静脈瘤を悪化させます。
体重増加は足への負担を増やし、腹圧の上昇により静脈還流が妨げられます。適正体重の維持は下肢静脈瘤の進行予防に重要です。
さらに、長時間の入浴やサウナにも注意が必要です。

高温環境では血管が拡張し、下肢静脈瘤の症状が悪化することがあります。入浴はぬるめのお湯で短時間にとどめることをおすすめします。
最後に、下肢静脈瘤があるにもかかわらず、正座や足を組む習慣を続けることも避けてください。これらの姿勢は静脈を圧迫し、血流を悪化させる原因となります。
下肢静脈瘤を進行させない方法はありますか?
下肢静脈瘤の進行を遅らせるためには、日常生活での予防策と適切な医療的サポートの両方が重要です。
日常生活でできる予防法として、まず弾性ストッキングの着用が効果的です。医療用弾性ストッキングは、足首から上に向かって段階的に圧迫することで、静脈の血流を改善し、むくみやだるさを軽減します。

下肢静脈瘤の進行予防において最も効果的な保存的治療法とされており、適切な圧迫圧(20〜30mmHg程度)のものを医師の指導のもとで使用することが推奨されます。
次に、適度な運動の習慣化も重要です。ウォーキングや水泳、サイクリングなど、ふくらはぎの筋肉を使う有酸素運動は、筋肉ポンプ作用を高めて静脈還流を促進します。1日30分程度の運動を週3〜4回行うことが理想的です。
また、足の挙上も効果があります。就寝時や休憩時に足を心臓より高く上げることで、重力を利用して静脈血の還流を助けます。クッションや枕を使って足を15〜20cm程度高くする習慣をつけましょう。
さらに、体重管理と食生活の改善も大切です。肥満は下肢静脈瘤のリスク因子であり、適正体重を維持することが重要です。食物繊維を多く摂取して便秘を予防することも、腹圧上昇による静脈への負担を軽減します。 医療的サポートとしては、定期的な専門医の診察を受け、症状の変化や進行度合いをチェックすることが大切です。必要に応じて治療のタイミングを相談できる関係を築いておくことで、重症化を防ぐことができます。
下肢静脈瘤は自力で治せますか?
「手術は怖いから、なんとか自分で治したい」というお気持ちは理解できます。しかし、結論から申し上げると、一度発症した下肢静脈瘤を自力で完治させることはできません。
下肢静脈瘤の根本原因は、静脈弁の機能不全です。壊れてしまった弁は、運動や生活習慣の改善で元に戻ることはありません。そのため、根治を目指すのであれば、医療機関での治療が必要となります。
ただし、前述の予防法を実践することで、症状を軽減し、進行を遅らせることは可能です。特に弾性ストッキングの着用は、自覚症状の改善に効果的です。「治す」ことはできなくても、「上手に付き合う」ことは可能です。
下肢静脈瘤は、命に直結する疾患ではありませんが、放置することで日常生活に支障をきたす症状や合併症を引き起こす可能性があります。「自然に治る」ことはなく、早期発見・早期治療が将来の足の健康を守る鍵となります。
現在は、血管内焼灼術など低侵襲で日帰りが可能な治療法が保険適用で受けられるようになり、治療のハードルは大きく下がっています。
足のだるさ、むくみ、血管の変化が気になる方は、まずは血管外科専門医にご相談ください。

当院では、下肢静脈瘤の診断から日帰り手術、アフターケアまで一貫してサポートしております。お一人おひとりの症状やライフスタイルに合わせた最適な治療プランをご提案いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
血管外科クリニック本厚木
院長 黒澤弘二
- 日本脈管学会認定脈管指導医/専門医
- 日本血管外科学会認定血管内治療医
- 下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医/実施医
- 弾性ストッキング圧迫療法コンダクター
- 日本フットケア足病医学会認定師